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INTERVIEW

インタビュー

まだ世の中にない価値をつくる。AIとエンタメの掛けあわせで社会課題解決に挑むプロデューサー

2024.09.04
eyecatch

AI×エンタメという新たなマーケットの創造に取り組む株式会社Pictoria。サブカルの枠を飛び越え、産業としてのポジションを確立する上で重要な鍵を握るのがアライアンス事業だ。
今回は事業責任者である山下執行役員にインタビューを実施。可能性と将来性、今後の展望について伺った。

営業経験がプロデューサー業務の土台となった

ー山下さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください

大学卒業後、新卒で求人広告の営業職としてキャリアをスタートさせました。主にメーカーを対象に、経営課題や事業課題を起点とする採用ソリューションの提案です。6年間のキャリアの後半ではマネジメントも経験しました。

その後、夫の転勤にあわせて退職。出産を経て社会復帰を果たします。それがエンタメ業界だったんですね。

ー人材業界からエンタメ業界へ?

前職でお世話になった大手玩具メーカーの人事の方が、キャラクターグッズを扱う企業に勤務されている人を紹介してくれたんです。その人と趣味があって盛り上がっているうちに「アシスタントなら仕事があるよ」と声をかけてくださって。

ちょうどとにかく何でもいいから仕事をはじめたい、と思っていたタイミングだったのでふたつ返事でお願いしました。

ー共通の趣味が取り持つご縁ですね?

しかもそれがアニメでして。私もともとアニメや漫画が大好きで、しかも紙の本が好きなので、本棚が常に増え続けていて床が抜けそうです(笑)。とはいえ当時はまさか仕事にできるとは思ってもみませんでした。やはり専門的な修行を積んでいないと無理な世界だと決めつけていたんですね。だけどアシスタントだし、せっかくのご縁なんだからやってみるか、と飛び込んだわけです。

ー仕事としてはどんな内容だったんですか?

わかりやすく言うとアニメやゲームの版権IPくじの商品開発プロデューサーですね。最初は予定通りアシスタントだったのですが、人手が足りなかったこともありますが、いろんなご縁とタイミングが重なり、くじ全体の商品開発を担当することに。一つのくじの中にさまざまなグッズがあるので、それらを全て同時に複数進行する。しかも版元様への提案も全て自分一人で担当していました。今となってはこの時の経験が活きているなと感じます。


ー自分でも自覚していない適性があったんですね

ものづくりって当たり前なんですがゴールがあり、そこから逆算してスケジュールを立てるんですね。さらに外部のデザイナーや工場にオーダーを出し、進捗を管理しながら形にしていく。よく考えるとそれって求人広告の営業時代にやってきたことと同じだったんです。クリエイティブのバックグラウンドがなくても、それぞれのプロフェッショナルに依頼をし、自分は理想となるものをぶらさずに旗振りし続けることができました。

ー営業の経験が全てプロデューサー業務に活かされたと

次の会社はゲームの開発で、同じエンタメとはいえ初体験。しかもオリジナルタイトルの立ち上げだったのでかなり大変でした。でもやはりここでも仕事の基本は同じ。シナリオライター、イラストレーター、エンジニアと打ち合わせをしてそれぞれに業務を依頼し、スケジュールと品質の管理を行う。アニメグッズでもゲームでも、プロデュースの基礎は変わりありませんでした。しかも、前職では版権の許諾をいただきグッズ制作をしていましたが、ここでは自分がライセンサーになることができました。どちらの気持ちもわかるようになれたのは貴重な経験でした。

ーゲーム関連は2社ほど経験されるんですよね

どちらもかなり熱心にお声がけいただいてのジョインでした。特に2社目から誘われた時はタイミングがあわず、何度もお断りしたほど。それでもずっと声をかけてくださって。プロジェクトが落ち着いたのでようやく考えてみようかと思ったんですが、今度は2人目の子どもを授かりまして。さすがに難しいですね、とお詫びしたら「いや全然問題ないですよ」って。

結局、身重で転職して半年経たずに産休に入りました。ちょうどコロナ禍でリモートワークだったこともあり、育休は取らずに復帰することができました。コロナ禍で唯一良かった点かもしれません。本当にありがたいご縁とタイミングに恵まれているなと思います。


“終わりのないコンテンツ”へのワクワク感

ーPictoriaへはどういった経緯で?

ゲーム会社でビッグタイトルを担当する部署に異動となったのがきっかけです。規模が大きすぎて新しいことへのチャレンジの壁が高かったんですね。挑戦に対する温度感の違いに、モヤモヤするようになってしまいました。

そんな時に以前にも声をかけてくれた例の大手玩具メーカーの方が「実はいまPictoriaという会社のお手伝いをしているんだよね」という話をしてくださったんです。

ーまたもご縁とタイミングがドンピシャほですね

そうなんです。で、詳しく聞くとAIとエンタメを融合させる、という話で。AIって最近よく聞くけど、便利とか効率という文脈でしか捉えられていませんでした。それがどうエンタメにつながるんだろう、と興味を惹かれたんですね。そこで代表の明渡と会うことになりまして。実際に話を聞いてみようということになったんです。

ーどうでしたか?

正直、ものすごくワクワクしたことを憶えています。と、いうのもAIなら「終わらないコンテンツ」を作り続けることができるから。

私自身エンタメ好きの一人として、声優さんが変わったりコンテンツが終わることに寂しさを感じていました。また、自分自身が担当したタイトルが終了してしまうという経験もしました。仕方ないこととはいえ、寂しかったですね。またアニメも漫画もゲームも基本的には全てエンディングに向かって進んでいくもの。これまではこれは不可避でした。

もちろん変わることや終わることの良さもあるけど、ここは残したい、というときに物理的に残せなかった壁をAIなら超えられる。そして、好きなキャラクターたちとインタラクティブに会話することができるかもしれない。そこに新しいエンタメの可能性を感じたんです。

ーそれでジョインを決意されたんですね
お話を聞いてから数カ月後の2023年6月に入社しました。これまでのキャリアの集大成のようですが、社外と交渉してアライアンスを組む事業の責任者としてのジョインでした。そもそもそれまでのPictoriaにはアライアンスという文化がなかったんです。大手と組んだプロジェクトがあっても、それを実績として次に活かしたり展開できていない。実にもったいないなと思いました。


ーPictoriaにおけるアライアンスの役割は

AI=便利という文脈の中で急に「エンタメとの掛け算」なんていわれても世の中に価値を提示しにくいですよね。ひらたく言ってわかりにくい。そこを認知してもらうにはPictoria一社の取り組みでは限界があります。だからAITuberの存在価値を一緒に作っていく企業様とタッグを組む必要があるんです。いわばパートナー探しですね。

ーそうすることで市場をつくっていくと

VTuberの歴史を紐解いてみても最初は違和感を覚えた人も多かったはず。アニメ好きから煙たがられる存在でもありました。それがいまや一大マーケットにまで発展しています。

さまざまなタイミングや要因が重なっているとは思いますが大手飲料メーカーがVTuberを起用したことをきっかけに、それまでアンダーグラウンドだったものが一気に本物感に見えてきた。AITuberでも同じムーブメントを起こす必要があり、そのためのアライアンス先を探しているわけです。

ー相性のよい業界や事業ってあるんですか?

これまで色々とお話をさせていただくなかで、コンテンツは持っているけれど人間だとここまでしかできない。継続するのが大変というようなケースは相性がいいですね。ずっと配信し続ける、いつでも返答してくれるというようなことを最大限活かせるような場合です。
地域振興を目的としたゆるキャラなんかもマッチングすると思いますね。

ーゆるキャラ、あちこちにいますよね

ご担当者さまは「キャラが大事」といって作りはするんですが、実はその先の運用がめちゃくちゃ大変なんですよね。そこにAIが入り込む余地は十分にあります。たとえばSNSの運用も得意ですし、外国人観光客への情報提供にも適しています。テンプレートではなくどんな質問にも答えられるし、なにより多言語対応が可能という面も大きいでしょう。もちろん24時間いつでもリクエストにお応えできますしね。


見えない課題を見えるようにする

ーアライアンス先探しの上での課題点などは?

ひとつ意識したいのは「AIが全て人の代替になるわけではない」ということ。あくまで人の能力の足りない部分を補完するもの、と捉えないと逆にあれもできない、これもできないということになってしまいます。

そうではなくて、たとえば英語と中国語はできるけどスペイン語はできないからAIに、とかこの時間帯は人が担えるけどその先はAIでサポートするといった使い方ですね。人の能力が及ばないラストワンマイルを任せるという認識を揃えておく必要があります。

ー人の限界の先をAIでサポートする感じですね

もちろんAIというと万能感や利便性にフォーカスされるので、そのギャップを埋めていくのもアライアンスとしては必要でしょう。ただし手応えとしてはいずれも超えていける壁だと感じています。そのためにもまずは弊社のAITuber『紡ネン』をしっかりと育てていかねばと思いますね。

ー『紡ネン』がアライアンス先開拓にも有効だと

『紡ネン』のできることが増えれば、それはそのままアライアンス先でできることも増えるわけですからね。いまリニューアルを控えていて(取材は2024年8月)これからさらにワクワクするような展開が待っています。『紡ネン』の育成とアライアンス先拡大のサイクルを回していくことが私のミッションであると考えています。


ーこれまでの仕事とはまた違ったやりがいがありそうです

やりがいは「まだ世の中にない価値をつくる」ということに尽きますね。たとえばキャラクターを動かすためには台本が必要で、収録が必要でというのが当たり前ですが、AIキャラであれば台本なしでインタラクティブに会話ができます。

AIキャラを活用することでアライアンス先企業にとっての「その先の世界」を一緒につくれるわけです。見えない課題を見えるようにして、共に解決していく醍醐味。これまでの仕事でも味わえてはいましたが、さらにスケールアップしたと感じています。

ーいわゆる「DX」とはひと味違う価値を提供できるわけですね

Pictoriaがやる以上はエンタメ文脈は外してはいけないと考えています。単なるDXならウチじゃなくていいし、先を行くプレイヤーもたくさんいますからね。あくまでコミュニケーションの領域でテキストだけじゃなく、キャラクターが存在する価値を伝えていけたらと思います。なんといっても創業以来蓄積してきたエンタメのノウハウは他にはないアセット。ここを活かせば目的に最適なキャラの提案も自信を持ってできます。

ー逆に山下さんがいま厳しいと感じていることは?

無形商材という言葉がありますが、まさに「AI✕エンタメ」という全く形がないものに可能性を感じてもらい、ご発注いただく難しさはありますね。往々にして「なんなのそれ?」というところからはじまりますし、たとえご担当者様からの理解が得られたとしても社内で上層部を説得するというハードルがあります。その時に担当者様を応援するツールをお渡しできていなければ、なかなか稟議も上がりにくいといったケースも。ここはひとつ、決して低くない壁だなと感じています。


可能思考で切り拓く未来のあるべき姿

ー執行役員として組織についての見解を聞かせてください

実はスタートアップは初めてなので、なにもかもが新鮮です。集まってくる人材も何かしらのプロフェッショナルが多く、いろんなバックボーンの持ち主がいる。若手の感性もあればベテランの知見もあり、さまざまな人たちとの出会いと切磋琢磨がPictoriaという会社を形成してきたんだな、ということを手触りで感じられます。

ー雰囲気やカルチャーはどうですか

代表の明渡とCFOの谷本、そして私の3人で経営ボードを担っているんですが、影響力の範囲の大きさを実感しています。それこそ前職でモヤモヤしていたのが変化の乏しさでしたがPictoriaでは思い切り舵を切れる。やってみよう、までの意思決定が早いんですね。

それは現場も同じで、会社としていまがいちばん面白いフェーズだと思います。これまで内向きだった組織が世の中に認められる会社になるわけで。大変なことや成長に伴う変化も少なくないけど、こういった瞬間に立ち会えるのはなかなか得がたいことですからね。

ー山下さんが仕事の上で大事にされていることってなんでしょうか

「可能思考」ですね。もともとの性格がポジティブということもありますが、社会に出てからさらに磨きがかかりました。と、いうのも求人広告の営業だったときにリーマン・ショックと東日本大震災を経験していまして。どこもかしこも採用ストップで、マーケットもシュリンク。こんなタイミングで電話してくるな、と言われることもありました。



でも、どれだけ断られてもどうすれば未来のことを一緒に考えられるかというスタンスを貫いた。1年後や3年後、もう一度採用状況が戻ってきたとき、どんな状態でいるのがベストかを一緒に考えましょう、と言い続けていたんです。

結果、そのとき叱咤激励をいただいたお客様とはいまでもお付き合いがあるほど。私の財産でもあります。出来ない理由を探すのは簡単。そうではなく、どうやったらできるかを考え続けるところに私の存在価値があると思います。

ー「AI✕エンタメ」が社会に提供できる価値はなんでしょうか

いま話題の『イマーシブ・フォート東京』やVRが提供してくれる価値は没入感ですよね。それに対してAITuberは「隣にいる」こと。存在自体が特別でなくなることが実現できれば、それが本当に唯一無二の価値だし、新しい体験の提供になると考えています。

ーAITuberがどこにでもいる世界をつくりたい、と

人を相手に話しにくいことってあるじゃないですか。そんな時にAIは存在感を発揮すると思うんです。また高齢化社会が進む中、おじいちゃんやおばあちゃんの話をずっと聞き続けてあげられるのもAITuberかもしれない。その時の声やビジュアルを家族のものにすることもできる。こうなると単にエンタメのワクワク感を超え、社会貢献性を帯びてきますよね。

ーAITuberは人の営みに寄り添う存在になりうるわけですね

人に近づけるように作っているAITuberですが、人じゃないからこそ話せることがある。矛盾しているようでもありますけどね(笑)。他にも妊娠出産にまつわる産前産後の鬱とか不登校の問題など、簡単に相談しにくいテーマはこれからの社会に広がる一方だと思うんです。AITuberがそういう人にとっての拠り所になれれば、社会課題の解決に一役買うこともできるんじゃないかと期待しているんです。

ー本日はありがとうございました!



【Profile】
山下 三夏 執行役員

求人広告の営業・マネジメント経験を経て、アニメグッズの商品開発プロデューサーを担当。その後ゲーム業界へ移り、女性向けIPのコンテンツプロデューサー、ディレクターを歴任。2023年6月にPictoriaに参画し、同年12月に執行役員に就任。アライアンス事業全般と自社コンテンツを担当。


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