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INTERVIEW

インタビュー

エンタメへの想いを起点にマーケットの拡大と活性化を目論む。攻めのCFOが語るコンテンツの可能性

2024.09.11
eyecatch

「AI✕エンタメ」という新しい領域でのリードカンパニーとして注目を集める株式会社Pictoria。先日もシリーズA2ラウンドにて2.3億円の資金調達を完了するなど、企業体としての体制強化も進んでいる。今回は組織の屋台骨となる管理部門を取り仕切る谷本CFOにマイクを向け、エンタメへの思いから組織戦略まで語ってもらった。

銀行からスタートアップへの華麗なる転身

ー谷本さんはもと銀行員だったそうですね

もともとは公務員を目指していました。自分の中に地方創生がテーマとしてあり、課題に対して仕組みで解決するなら中央から法律でアプローチしようと思っていたんです。国家総合職試験を受けて合格し、官僚となるべく省庁の面接を受けていました。

ところが周囲を見渡してみると都会生まれの都会育ちばかり。みんな筋金入りのエリートで政策の出発点も都会生まれの想像力によるものが目立つ気がしました。どうやら思想の前提からして自分とは違うな、と感じて方向転換。Uターン就職の道を選ぶことになります。

ーご出身は島根県でしたよね

金融で地元企業を応援しよう、と地元の銀行に入行。本店営業部に配属され、法人向けの融資でキャリアをスタートしました。その後リスク統括部に異動し、信用リスク管理や融資審査の進捗をチェックしたり。専門職として経験を積みました。

ーPictoriaにはどういったいきさつで

ある日、大学で一番仲の良かった友人から明渡さんを紹介されたのがきっかけですね。彼は明渡さんの高校の同級生で、実は大学の頃にも同郷で面白い事業で起業した友人がいる、という話は聞いていたんですよ。それがどうやら明渡さんのことだったらしいんですが、当時はまったく知りませんでした。

ー最初はどんな話だったのですか?

その頃のPictoriaは資金調達で1億円集めたところだったのですが、当時はまだ社員数10名ほどでコーポレート担当者がいなかったんですね。そこから先は採用拡大やさらなる資金調達などが控えていて、管理部門を任せられる人材はどこかにいないか、と明渡さんがあちこちに声をかけていた。それで僕の友人にも話が届いたというわけです。



ー人のつながりだったんですね

3人でLINEでつながってお酒を呑みながら話をしたのが最初でした。明渡さんからは起業の経緯や事業のビジョン、テックとコンテンツをかけあわせたAIのVTuberを作るといった構想を聞かせてもらったんです。

AIとかWeb3の世界って銀行の対極にありそうで、実は金融業界にもDXの波は届きつつありました。なので比較的解像度高くお話が聞けたのと、個人的に昔からVTuberが好きだったこともあって、面白い試みだなぁと思いましたね。

ー明渡代表の描くビジョンに惹かれたと

明渡さんいわく、日本に残された資源や戦い方はコンテンツであると。地方はもちろん東京でも高齢化が進み、人口は減り、経済力をどこまで維持できるか。そんな中でコンテンツは世界レベルで評価が高いジャンル。しかもIPコンテンツはヒットすれば人力をかけずともライセンスで広がるビジネスです。人口が減ってもすごいクリエイターを生み出せば世界で戦うことができる。確かに、と納得したのを憶えています。

ーもともと谷本さんが描いていた地方創生にも通じますね

それこそ島根の田舎からでも漫画を描いたりアニメをつくったり、VTuberとして配信することで世界に向けてデビューできるわけです。こういう取り組みが日本全国に普及することやIPコンテンツで国力を高めることは地域貢献にもつながります。
もともとは転職を考えてはいませんでしたが、変化に富んだスタートアップで自分の力をどれだけ発揮できるか、というチャレンジにも心が動いた。
いろんな要素が重なってPictoriaへのジョインを決めました。



見た目の面白さよりも裏側の仕組みに興味を

ー昔からVTuberが好きだったとおっしゃいましたが…

はじめて夢中になったコンテンツはゲームでした。ハッキリと憶えているのはポケモンですね。通信の要素があったので一人でも遊べるし友人とつながってバトルしたり交換したり。
そこから発展してYouTubeやニコニコ動画などのゲーム実況を見るようになりました。中学高校の頃はボカロがヒット。まさにニコ動の最盛期でした。

ーその流れが大学生になっても続くと

2016年に『キズナアイ』というVTuberが登場します。YouTuberにはあまり興味なかったんですが、バーチャルアニメ風の3Dモデルをはじめて見たときに「これは面白い」と。その後あっという間にブームがやってきて、企業ではなく個人の力でコンテンツを生み出せる時代になったと感じました。

ーVTuberの仕組みに興味を持たれたんですね

個人の表現の幅がそれまでと比べて圧倒的に広がった、と感じましたね。性別や年齢、属性などを超えてキャラを設定できる。それまでアニメなんて何億もかけないと作れなかったものがスキルさえあれば身一つで実現できるなんて、とワクワクした思いはいまでも持ち続けています。

ー現在担当されている業務について教えてください

メインのミッションはCFOです。資金調達や財務まわりの業務ですね。次の投資ラウンドに向けて株主の方とのコミュニケーションを中心に、株主総会の手配や各種手続きまで一人で担当しています。

その他には人事や労務、経理、法務、総務、広報…ほぼ全ての管理部門業務に関わっています。もちろん作業レベルまでの全てを一人で回すことは物理的に不可能なので社労士さんや弁護士さん、外部のパートナーの手を借りながら、ですけどね。



ー実際に手を動かすことは少なかったりするんですか?

いや、それがそうでもなくて(笑)たとえば採用だと媒体選定からスカウト送信、一次面接も全てやっています。給与額を決めたり、勤怠管理もですね。総務でいえばオフィスの引越しが大変でした。ここに決まるまで2〜30件ほど内覧しましたし。

あと法務では契約書を作ったり、クリエイターさんとの業務委託契約やNDAの雛形確認など。法学部出身なのでこのあたりはなんとかなっていますけどね。

ー大学の学びと前職での経験が活きていますね

もちろん全くの畑違いの領域もあります。たとえば人事ですね。まったくの未経験ですから手探りです。いま社員が約30名で業務委託メンバーを入れると総勢50名規模。これからさらに採用強化していくことを考えると、そろそろ人事や採用のプロが欲しいところです。

ー他にここは採用したい、というポジションはありますか?

直近でいうと経理の担当者を採用したいですね。資金調達している以上、月次決算など投資家・金融機関の皆様にもご報告する会計書類を作っているんですが、ここを任せられる人が欲しいです。やはり商流に沿って売上や原価を入力するのは社内の人間でないと。この辺りに一定の理解ある経理担当も必要になってきています。

ー会社の成長に追いつき、追い越せの部門ですよね

しっかりと守るべきところは守る。そのうえで僕が目指しているのは攻めのCFOであり、攻めのコーポレート部門。その基盤をつくる仲間を絶賛募集中というところです。



世界中の誰もがインフルエンサーになれる世界

ー攻めのCFOの具体像を教えていただけますか

積極的なアウトプットでマーケットの可能性を広く伝えていくことにあると考えています。先を行くVTuberだってようやく産業として走りはじめたところです。そこにAIやWeb3と言われても、果たしてどれぐらいの可能性があるかわかりにくい。投資家や株主にマーケットが大きく広がっていくイメージを持ってもらうことが大切なんです。

ーそのために発信力を駆使すると

国内だけでなく、世界ではどういう動きがあるのか。競合や事例など日々ニュースをキャッチして、投資家や株主にお届けするべきだと感じています。アメリカではAIのVTuberが何万人ものユーザー獲得に成功した、といったトピックスですね。市場自体に魅力を感じてもらう必要があり、それもCFOとしての重要なミッションだなと。

ー谷本さんご自身が最も強く感じるAITuberの可能性は?

VTuberが個人の能力を最大限に引き出すとしたら、AITuberはさらに一歩先を行くコンテンツだと思っています。もはや自分でやる必要すらない。VTuberは中の人のトークスキルや声の良さ、歌の上手さなどが面白さに繋がりますが、AITuberの場合はそれもいりません。



ー感性さえあればいい、と

個人の頭の中で考えた企画やキャラクターのイメージ通りに活動してくれますから、完全にプロデューサーに徹すればいいわけです。おっしゃる通り感性や想像力をそのままコンテンツとして形成し、提供できる。Pictoriaの場合は企業としてやっていますが、エンジニアさんが個人で立ち上げているAITuberも増えていますからね。

ーそれでもまだエンジニアリング能力は必要なんですね

そこを超えるためのプラットフォーム化も進めていこうと考えています。AITuberとして個人が活動をはじめるハードルを下げるツールの提供ですね。エンジニアの知識や技術も不要になれば、世界中の誰もがVTuberやインフルエンサーになれる。たった一人でキャラクターがつくれる世の中になるでしょう。

ーAIキャラがさらに身近に、簡単になるんですね

PictoriaとしてAITuberの創造や育成に力を入れるとともに、個人的にはここが発展可能性として最も大きい領域だと感じています。これが実現できれば本当の意味でAITuberが身近なものになる。誰と話したいか、が実現できるアバターみたいなものですね。



全てのステークホルダーを支援するコーポレートに

ー日々のお仕事で大事にされていることってなんですか?

銀行時代の上司に言われたことで、いまでも仕事の上で大事にしている考え方があります。ひとつは「これはまあいいか、って思ったときが一番やばい」です。銀行の業務って手続きが複雑で面倒なんですね。そんなとき、つい「これぐらいはいいだろう」って見逃すとそこが致命的なミスにつながる、というジンクスであるとともに教えです。

ー細かいな、時間ないな、めんどくさいなって時ですね

管理業務にも似たような側面があるので、まず立ち止まって考えたほうがいいと思います。自分だけでなくコーポレート全体でそうあるべきかなと。そしてふたつめが「入口を間違うと出口まで間違う」です。プロジェクトでもなんでも入口の段階で解像度を高めたり、しっかり考え抜いてはじめることが大事なんです。

とはいえスタートアップではこれが難しい。やりながら考えるとか、良くも悪くも朝令暮改みたいなこともありますからね。でも最初にできるだけ論点は洗い出しておくべきかと。

ー勢いとスピード感を重視しがちですからね

水を差すのもどうかと思うのでやめておくか…みたいな心理は働きますよね。しかし覆水盆に返らずとはよく言ったもので、時計の針は戻せないもの。とりあえず思ったことや論点は出し尽くしたほうがいいんです。あるいは気になる箇所はコメントしておく。このあたりは銀行らしいといえば銀行らしい感覚かもしれません。



ーそういう観点をスタートアップが持つことは大事かと

Pictoriaの中でも僕が最も厳格な環境の出身なので、そこで得たノウハウは認識だけでもみんなにさせてあげたいと思っています。特に新卒入社者はスタートアップでの仕事の進め方がスタンダードだと思い込みがち。一般的なお作法を知ることは、対社外に向けての組織全体のブランディングにもつながりますから。これからは人材を育成するだけでなく、輩出できる会社にしたいんです。

ー今後、会社として磨きをかけていきたいことってありますか?

テックとエンタメのバランス感覚ですね。最先端技術を使えば面白くなるわけではなく、エンタメに傾倒しすぎると競合が強すぎる。テックにエンタメを掛け合わせるところにオリジナリティがある以上、メンバー一人ひとりがバランス感覚を身に着け、磨いていくことが必要であり今後の成長の鍵を握っていると思います。

ー課題であると同時にワクワクしてきますね

VTuberも最初は限られたオタクだけのものでした。そこから誰もが楽しめるコンテンツへと発展しています。AITuberもいまはまだAIの技術的な側面に関心の高いギークが集まっている状態です。初期のファンはそれでいいのですが、ここからバランス感覚を駆使してアップデートを図り、どなたにも楽しんでいただけるエンタメへと昇華させていく。言われるまでAIであることがわからないという世界を目指しています。

ーコーポレートながら事業ドメインへのコミットが深い…

コンテンツを生み出している会社のコーポレートである以上、そこに興味関心があることはとても大事だと考えています。事業側と仲良くなることが円滑な業務推進にも役立ちますしね。さらに将来的にはコーポレート発でフリーランスのクリエイターに向けた情報発信も手掛けていきたいと考えているんです。契約まわりや確定申告、著作権といった彼らが苦手としがちな分野の支援ができたら、パートナーともいい関係が結べますよね。

ー全てのステークホルダーをサポートする管理部門ですね

社員や株主はもちろん、関係するイラストレーターやエンジニア、あるいはこれからつながる可能性のある人まで巻き込んだコミュニティが作れたらいいですね。生成AIとは一定の距離を置くクリエイターも少なくないのが現状ですが、人間の想像力と創造力を無限に広げてくれるものだと発信できれば、さらに市場の魅力も増すのではないでしょうか。

ー本日はありがとうございました!


【Profile】
谷本 旭 CFO 経営企画

島根県出身。一橋大学法学部卒業。銀行に新卒入社し法人融資業務を経験後、信用リスク管理部門にて内部格付制度の運用、融資ポートフォリオリスク分析などを担当。2022年8月にPictoriaに参画し、バックオフィス1人目として経営企画・管理全般を担当する。

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